防災士インタビュー

安部俊一さん

お仕事の内容をお聞かせください

横須賀市東部の東京湾に面した「よこすか海辺ニュータウン」で連合自治会やまちづくり協議会の会長を務めています。この街には大学や大規模な商業施設が集積しているため、夜間人口6千人に対して昼間人口は10倍の6万人に膨張します。しかも、昼間滞在者の約9割が地区外からの流入人口で、被災した場合には身元確認に長時間を要します。この街は全域が臨海部の埋立地であることから、地震災害や津波災害への対策を強化しています。
また、平成25年度に発足した一般社団法人マンションライフ継続支援協会の理事を拝命したことから、マンションの災害対応能力を向上させるためのMLCP(マンションライフコンティニュティプラン:BCPのマンション版)の策定に取り組む管理組合や自主防災会への支援をこれから開始します

なぜ防災士の資格を取得しようと思われましたか

私は10年ほど前から各地の町内会・自治会等の地縁団体、自主防災組織、マンション管理組合向けに防災講演会を開催してきましたが、「防災士」という資格があることを聞き及び、防災知識の再点検と補強目的で受講しました。錚々たる講師陣の中には面識のある方々も多く、楽しく受講できました。

実際に取り組まれていることがありましたらご紹介ください

海辺ニュータウン地域固有の災害リスクに対応した独自の広域防災計画を策定中です。臨海部の商業街区では1日の利用客数が5千人~1万人にのぼる大型店舗が4店あり、海に面した市営うみかぜ公園は親水公園として整備されたため防潮堤がありません。市営海辺つり公園を含め休日には5千人を超す市民が訪れます。津波警報が発表された場合に大勢の来訪者を高層マンション群などに迅速に避難させるため、施設別の避難誘導リーダー・避難ルート、エリアごとの避難施設を防災計画に明示する予定です。横須賀市役所と津波避難ビル管理者との間で防災協定を締結することも急がなければなりません。

今後の課題、抱負をお聞かせください

東京湾に面した海辺ニュータウン地区で想定される最大の激甚災害リスクは、東京湾沿岸石油コンビナートの巨大タンク群が、地震動・液状化・地盤沈下・側方流動・津波による船舶衝突などで岸壁とともに破壊された場合、東京湾に流出した石油類で大規模な海上火災が発生することです。火災規模が大きければ火災旋風が発生し海岸から離れた場所にも延焼すると考えられます。このような状況に陥れば地域の防災組織では手の施しようがありません。市区町村や都道府県レベルの取り組みでも被害を防止することは不可能でしょう。国を挙げて新法を制定し、コンビナートの耐震性能を強制的に向上させ被災を防ぐ手立てを早急に講じなければなりません。
「いつ起きるか不明確な災害の為に膨大な予防的投資はできない」、民間企業の自助努力に委ねていては福島第一原発事故の二の舞になることは明白です。 「いつ起きても不思議ではない」といわれる南海トラフ巨大地震や首都直下地震から国民の命を守る取り組みは、「国家プロジェクト」と位置付けるべきと考えます。

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