防災士インタビュー

長島博之さん

お仕事の内容をお聞かせください

リョービ株式会社の総務課で国内外のグループ会社を対象とした危機管理業務を担当しています。当社の主要事業のひとつであるダイカスト事業は、自動車のシリンダーブロックやトランスミッションケースなど、300車種以上の部品を自動車メーカーに供給しており、災害発生時にもサプライチェーンを寸断させないことが大きな課題となっています。そのため、日常業務においては、自然災害や疾病災害等、様々な災害・事象を想定し、事業継続計画(以下、BCP)の策定に取組んでいます。
特に地震については切迫度が高いと認識し、建屋設備の耐震化や緊急地震速報の拡充、震災訓練などハード、ソフトの両面から災害対応力の強化を図っています。

被災された経験について、お聞かせ願います

1983年の日本海中部沖地震を青森県で経験しました。この地震では秋田、青森など日本海沿岸で津波による多くの犠牲者が出ましたが、当時、被災地の入江には、見上げる高さまで遡上痕があり、津波の恐ろしさを実感しました。また、東北地方太平洋沖地震の時は、当社の営業拠点が被災したため地震対策組織の先遣隊として早い時期に現地入りしました。津波は営業拠点のそばまで到達し、押し流された家屋や電柱に絡まりねじ切れている車など、被災地の光景は想像を絶するものでした。

なぜ防災士の資格を取得しようと思われましたか

仕事として取組む防災・減災対策は、企業防災の視点が中心となりますが、社員や家族の生命、安全を守り、迅速な復旧に繋げるには地域防災を含め、フルタイムで備えなければ不十分との思いがありました。
そのような中、防災士研修で「自助」「共助」「協働」の防災の基本や避難所の運営、また地域に密着した防災対応の知識などが習得できることが分り、自分の防災知識の再確認やレベルアップの機会として防災士研修を受講いたしました。また私は以前、東北に住み、海に関わる仕事をしていたのですが、その時の知り合いが津波で被災しました。それ以降、復旧に関わる仕事やボランティアで被災地には幾度となく出向きました。専門知識を持った防災士の活動が防災・減災、ひいては早期復旧にも繋がればとの思いもあり、防災士の資格を取得しました。

現在取組んでいることがありましたらご紹介ください

3.11以降、東海・東南海・南海が3連動で揺れる南海トラフ巨大地震の発生が懸念されています。従来、当社で策定していたBCPは東海地震や首都直下型地震等、地震の単独発生を想定したものであったため、広域に地震災害が発生した場合には有効に機能しないとの懸念がありました。
そのため、現在は内閣府中央防災会議が策定した最新の地震想定等を参考に、社内の被害想定や事業復旧シナリオの見直し、代替生産の検討など震災対応全般の再構築に着手しています。また、最優先課題である「社員・家族の生命・安全を守る」については、社内情報誌による防災意識の啓蒙や、津波浸水が想定される地域にある工場への「津波避難やぐら」の設置など、関係部署と連携し防災・減災の課題解決に取組んでいます。

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