防災士インタビュー

関口奈美さん

防災士を目指したきっかけ

>私は、NHK前橋放送局のキャスターとして、テレビやラジオの情報番組を担当しています。自然豊かな群馬県は、農業や林業など第一次産業が盛んなこともあり、それらに従事する方々を取材することが多くあります。そして、取材をする中で、天気が与える影響の大きさを実感し、天気のことを知ればもっと深い取材ができるかもしれないと思い、気象予報士の勉強をすることを決めました。

私が防災士を目指したのは、その気象予報士の勉強をしていた時でした。受験のアドバイスをしてくれた予報士の先輩がいつも言っていたことは、「気象予報士の一番の役割は、ただ晴れか雨かを予報することではなく、災害から人の命を守ること。それこそが気象予報士の責務だ。」ということでした。 ちょうどその頃、群馬県館林市で、竜巻による被害が出ました。スーパーの駐車場に停められていた車が横転している様子は今でも鮮明に目に浮かんできます。地震や台風などの被害を受けることが比較的少ない群馬県民にとって、突然起きた竜巻は、県民に大きな衝撃を与えました。まだ気象に関する知識もなく、防災意識も低かった私は、何もできない自分に苛立ちを感じたのを覚えています。その時、気象だけでなく、防災に関しての知識も身に付けたいと思いました。

放送を通して・・・

幸いなことに、群馬県は、地震の被害が少なく、明治以降の地震ではほとんど死傷者が出ていません。そのためか、損害保険料率算出機構の調べによると、2009年度に群馬県で火災保険に新規加入した上で地震保険にも加入した人は約3割と、全国で46番目の低いということで、県民の防災意識の低さを表していると感じました。台風の被害も少ないように思いますが、カスリーン台風では県内でも592人の死者が出ています。現在では台風情報も発達しインフラの整備も進んでいるため、台風でこのような大きな被害は出ないだろうと思いがちです。ただ、いつどのような災害が起こるかは分りません。

防災士となった今、防災の必要性を伝えることが放送に携わる私の役目だと思っています。「群馬県は大丈夫」「自分は大丈夫だろう」という考えを変えるには時間がかるかも知れませんが、私は県民向けのFMラジオを通して防災の重要性を伝えています。いつ大きな地震が起こるか分らなければ、台風や浅間山の噴火も懸念されます。利根川が流れる水源県・群馬だからこそ考えなければならないことも多いはずです。災害を起こさないようにはできませんが、人々の意識を防災に向けることは私にもできると考えています。中でも、私は地域のコミュニケーションを密にしておくことの大切さも伝えたいポイントだと思っています。防災士講座を受講した際、阪神・淡路大震災の時、倒壊した建物の中から救出された人の多くは、救急隊員ではなく近所の人など近くにいた人によって助けられたということを聞いたからです。

「災害が少ないと言われる群馬県に住む人が、一番防災意識が高い」と言われることを目標に、これからも放送を通じて防災の重要性を伝えていきたいと思います。

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