防災士インタビュー

檜山靖洋さん

お仕事の内容をお聞かせください

NHK総合テレビ「おはよう日本」の気象キャスターを担当しています。
 毎朝午前1時に起床、3時前には局に入り、5時から出演です。局に入るとすぐに気象状況の確認、全国の天気の流れを解析し、解説のポイントを決めます。着替え、メイクの後、画面構成を考え、コメントを組み立てて、あとは最新の予報や情報をチェックして、本番にのぞみます。ここまで、あっという間に時間が過ぎて行きます。
 気象情報で、一番に伝えなければならないのは防災情報です。いつでも対応できるよう、過去に発生したいろいろな災害のパターンを頭に入れる作業を普段から地道に行っています。大きな台風から局地的な豪雨まで、災害発生のサインを見逃さないよう、解析をしています。データ収集・解析など地道な作業が大切な仕事です。

ご自宅または職場周辺の災害環境はいかがでしょうか

NHKでの仕事が多いですが、時々所属事務所に帰ります。事務所の場所は都内のビルの50階以上という高層階です。大きな地震が発生すると、長周期の揺れによる影響や、エレベーターに閉じ込められることが心配です。現在の自宅と実家は、比較的台地にあり、大雨による浸水の心配はありません。近くに山やがけもないので、土砂災害の影響もないと思います。

ご自身で被災された経験がございましたらお聞かせください

大きな被災の経験はありません。2004年の新潟県中越地震が発生したとき、高層階にある事務所にいました。東京では強い揺れではありませんでしたが、地震がおさまったあとも、1時間ほど、ゆらゆらと船に乗っているような感覚だったことを覚えています。
 東北地方太平洋沖地震では、自宅に帰ると、冷蔵庫がななめ前にせり出していて、しっかり固定する必要を改めて感じました。比較的被害が少なかった都心でも、停電や、交通の遮断、商品の品薄状態で混乱していましたので、日頃の備えが大切だと痛感しました。

なぜ防災士の資格を取得しようと思われましたか

自分自身を守るため、家族を守るためです。そのような人が増えれば、それだけ災害に強い都市、国になるだろうと思います。
 まずは、自分を守るための正しい知識を身につけようと思いました。もちろん、防災情報を伝えるキャスターとしても、自分が話すことが薄っぺらい防災情報にならないように、少しでも説得力ある情報を伝えたいと思ったことも防災士取得のきっかけです。

防災士の資格で得たことを、どのように職務や地域での活動に役立てようとされていますか

防災士研修では、災害現場で取材や活動をされた講師の方のお話を聞くことができました。自分ではなかなか経験できない部分なので、とても貴重なものでした。その貴重なお話を自分の知識として、防災情報を伝える際に活かしていきたいと思います。

現在、実際に取り組まれていることがありましたらご紹介ください

最近、50階以上を階段で上り下りしたり、3~4駅くらいは歩けるように、自宅最寄駅より前に電車を降りて1時間歩いて帰ったりしています。エレベーターが止まったときの高層階への上り下り、鉄道が止まったときの帰宅は、自分の足を使うしかありません。

今後の課題、抱負をお聞かせください

少しでも多くの人に、防災の大切さを伝えたい。
 横浜の鶴見川周辺には、電柱や掲示板に、ここは浸水のおそれがある地域だということが掲示されています。このような取り組みを行っている町もあれば、洪水ハザードマップや避難場所などがしっかり明示していない町も多いように思います。情報を広く周知することが課題だと思います。
 また、自分の身は自分で守るということが基本的には一番大切だと思います。テレビでは、すべての人に必要な情報を届けるのは難しいです。一方で、インターネットや携帯電話などで、自分から気象情報を得ることもできます。 自分で入手した気象情報を、どのように利用するかを多くの人が知っていることが大切です。気象情報の使い方を広めて、少しでも社会に貢献できるようにしたいです。

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