防災士インタビュー

蛭間芳樹さん

お仕事の内容をお聞かせください

 株式会社日本政策投資銀行 環境・CSR部で、「BCM格付」業務の主幹をしています。これは、企業の防災/減災対策、事業継続対策などを総合的に評価し、その取り組みの程度に応じて金利を優遇するという「BCM格付」の専門手法を取り入れた世界初の金融商品です。この他にも、格付の後の企業様(役員やリスクマネジメント担当者)への簡易的なコンサルティング、各種セミナー等での講演、調査・研究とレポートの作成、国の会議をはじめとするリスクマネジメント関連の各種会議への参加、世界経済フォーラム(ダボス会議)など国際的な機関とリスクマネジメントに関する情報交換・調査研究等を担当しています。
 また、東京大学生産技術研究所 都市基盤安全工学国際研究センター 目黒公郎研究室(都市震災軽減工学)協力研究員として、都市を如何に災害から守るかの研究を行っています。具体的な研究テーマは、組織の危機対応/災害情報マネージメント/災害情報共有プラットフォーム/災害時の医療/日本社会に適したBCP/BCM/防災格付/企業のリスクマネジメント/リスクファイナンス/リスクマネジメントと公共政策・金融政策などです。

なぜ防災士の資格を取得しようと思われましたか

 学生時代(学部~修士)に、都市を対象とした防災やリスクマネジメントの在り方を探る為に、「組織の危機対応と災害情報マネージメント」に関する研究を行っておりました。一方、災害現場や事前の抑止力向上に必要となる自助防災力や、地域防災のコア人材としての知見を体系的に学びたいと思い、防災士の研修講座を受講しようと思いました。また、指導教官である目黒公郎先生(東京大学教授 東京大学生産技術研究所都市基盤安全工学国際研究センター長)が防災士制度の創立者のお一人でもありました。

お仕事以外で、取り組まれていることがありましたらご紹介ください

 六本木ヒルズのアカデミーヒルズにて、「蛭間防災塾」という私塾を開催しています。六本木ヒルズやその周辺に勤める社会人を対象に、互いに対話する講義を行っています。狙いは、リスク情報を読み解く能力及び自助力の向上です。危機管理で重要なことは「想像力」です。
 また、こどもクリエ塾(国際的に通用するリーダーシップと創造力を育てる、22時までの学童スクール)の講師をしており、小学生を対象とした防災教育も行っています。最低限の知識は必要ですが、それよりも子どもの豊かな創造力・知的好奇心を育むことを目的とした授業をしています。

今後の課題、抱負をお聞かせください

 日本は遅かれ早かれ、“西日本大震災”となりうる東海・東南海・南海地震(南海トラフ地震)や、“平成関東大震災”となりうる首都直下地震など大きな被害が予想される災害に見舞われます。まずは、東日本大震災という災害について、事実に基づいた情報の整理を丁寧にする必要があると考えています。原因・結果の正確な認識、様々な分野・観点からの教訓の抽出と、それらの総合化・体系化が必要と考えます。多用された「想定外」とは何だったのかを検証することも大変重要です。相応の時間を要するものと考えますが、将来世代が目の当たりにする災害に対する現在世代の責務です。また、リスクマネジメント分野において、日本が世界の革新者になるべく、一市民として家族の安全確保、日本政策投資銀行の職員として金融面での貢献、大学に属する者として研究面や教育面での貢献ができるよう、引き続き努力していきたいと思います。ダボス会議で明らかになりましたが、この分野での主導権を日本が取れる可能性があると思います。

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